重要分野の最新動向をお届けする取り組みの一環として、本レポートでは、インドにおけるクリティカルミネラル(重要鉱物)の機会、それを獲得するための政策的枠組み、そして強靭なサプライチェーン構築に向けた「日印協力」の戦略的役割について解説します。
重要鉱物と経済安全保障:インドのサプライチェーン強靭化への道
重要鉱物やレアアース(希土類)は、クリーンエネルギー、先端エレクトロニクス、電気自動車(EV)、防衛システムに不可欠な基礎資材です。インドは急速な経済成長に伴いこれらの消費量が急増していますが、サプライチェーンが中国に過度に集中しているため、構造的な脆弱性を抱えています。クリーンエネルギー転換を国際公約として掲げるインドにとって、この中国依存からの脱却は戦略的な最優先課題です。
2025年に中国がレアアースの輸出規制を強化したことで、サプライチェーンの多角化を目指す世界的な動きが加速しました。これを受けてインドは国際協力を強化しており、2026年5月に立ち上げられた「クアッド重要・新興技術に関する日米豪印重要鉱物イニシアティブ枠組み(クリティカルミネラルイニシアティブ・フレームワーク)」では、日米豪印の4カ国がインド太平洋地域における強靭なサプライチェーン構築に向けて最大200億米ドルの資金拠出をコミットしました。 日印両国は「日印経済安全保障イニシアティブ(2024年および2026年)」のもとで連携を深めており、クリティカルミネラルを最優先分野と位置付け、官民パートナーシップ(PPP)の強化を進めています。
主な政策措置:
国家クリティカルミネラル・ミッション(NCMM): 2025年1月に承認されたNCMMは、総予算約36億米ドル(財政支援約17億米ドル、国営企業等による投資見込み額約19億米ドル)を投じ、2024-25年度から2030-31年度までの7年間にわたり実施されます。これは、インドを単なる「鉱物消費国」から「バリューチェーン全体の生態系(エコシステム)を開発する国」へと転換させる戦略的な一手です。