- 概要
インドの所得税制度は、過去60年以上の歴史のなかで最も広範かつ抜本的な構造改革を経験しました。2025年所得税法(IT Act, 2025)は、従来の1961年所得税法(IT Act, 1961)に代わるものであり、2026年4月1日に施行されました。さらに、本法には直接税中央委員会(CBDT)によって2026年3月20日に告示された2026年所得税規則(IT Rules 2026)が付随しています。
本稿は、多国籍企業およびそのインド子会社に関連する重要な変更点を網羅的に取り上げ、実務担当者向けに包括的な解説を提供することを目的としています。特に、クロスボーダー取引における支払実務、移転価格税制(TP)に係るコンプライアンス、二重課税防止協定(DTAA)に基づく軽減措置の適用手続、ならびに新たな源泉徴収税(TDS)の枠組みに重点を置いています。
- コンプライアンス全体の枠組み ― 主要な変更点
最も大きな変更点は、申告様式、条文番号および申告コードの全面的な再番号付けにあります。1961年所得税法(IT Act, 1961)は、60年以上にわたる改正の積み重ねにより、その番号体系が断片化していました。これに対し、2025年所得税法(IT Act, 2025)および2026年所得税規則(IT Rules 2026)は、重複する様式の統合、報告様式の標準化、ならびにインドのデジタル税務行政基盤との整合を図ることを目的として、整理された一貫性のある番号体系を導入しています。
新たな所得税制度では、長年にわたる解釈上の問題を解消するため、2つの基本的な税務概念が再定義されています。